農業用水水源地域保全対策事業
普及促進のための基本計画
(1)趣旨
埼玉県の農業を支える農業用水は、県内および群馬県に広がる森林等を水源としている。これらの森林は水資源かん養をはじめ、国土保全、保健休養など貴重な役割を担っている。しかし、木材価格の低迷や造林・伐採の経費増加等により林業や木材産業の収益性が低下しており、山村地域の過疎化・高齢化等により、集落機能の低下や林業生産活動の停滞が生じている。その結果、森林の有する公益的な機能の発揮に支障を及ぼすことが懸念されている。
このような中、一部の水源林については間伐の遅れによる樹木の生育不良や林床植生の衰退による土壌流出が見られるほか、台風等による山腹崩壊や不安定土砂の堆積が見られる状況にある。農業用水の水源保全の観点からも、森林の整備及び保全の一層の推進が必要であり、間伐等を積極的に実施する必要がある。
このため普及促進活動については、水の恩恵を受けている下流地域の農業者や地域住民等が、水源地域を取り巻く現状や課題について理解を深める活動等を推進し、農業用水の水源地域の保全を推進するものである。
(2)意義と役割
農業用水は水田や畑地へ用水を供給することに加え、多様な生態系を保全し県民に安らぎや潤いを与える景観や親水空間を形成するほか、防火用水などの地域用水としての役割を果たすなど多面的な機能を有している。また水田や畑地で使われた農業用水は排水路に集まって、再び下流域の農業用水として反復利用され、県内全域の農地を潤している。
農業用水は、その水源である森林の水源かん養機能によってもたらされるものであり、水源林を良好な状態で保全していくことが必要となっている。
(3)取組みの現状と推進上の課題
埼玉県の農業用水は江戸時代に行われた利根川の東遷や荒川の西遷、葛西用水路や見沼代用水の開削により骨格が形成され、埼玉県の農業を支える重要な基盤として整備されてきた。これらの農業用水は、群馬県利根川の水源林、県内秩父地域、飯能・入間地域、児玉・寄居地域の森林を水源としており、農業用水の良好な利用環境保全のために水源林の保全が必要となっている。
しかし、林業や木材産業の収益の低下や、過疎化・高齢化による集落機能の低下などから間伐等の実施が遅れている状況であり、水源林として保全に課題が生じている。このため農業用水と水源地域それぞれの役割について普及啓発し、水源地域の重要性について意識の向上を図ることにより、水源林を健全な状態で確保することが必要である。
(4)推進の基本的方向と取組みの内容
水源林を良好な状態で保全するため、水の恩恵を受ける下流地域の農業者や地域住民等が、農業用水や水源地域の役割等について理解を深める活動等を推進する。
ア) 普及啓発資料等の作成
イ) 研修会等の開催
ウ) 施設案内等の製作・設置
エ) 広報活動の実施
(5)推進に向けた関係者の役割
ア)埼玉県
普及促進基本計画の策定。事業実施の支援を行う。
イ)埼玉県土地改良事業団体連合会
事業実施主体として、県全域に関わる取組を実施する。
ウ)土地改良区等
事業実施主体として、受益区域内における取組を実施する。
大里用水土地改良区では、大里用水の水源地である荒川上流水源林と農業用水や田んぼの様々な機能を理解してもらうため、地域イベントへの参加や啓蒙パンフレットの作成などの活動を行っています。